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  • 2010.02.08 Monday
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続 アンケート結果発表

 『フロム・ヘル』の日本語版を刊行したのが今年の10月、
それに先立つ9月のこと、刊行記念キャンペーンとして、
オリジナル図書カード付きの予約注文を受け付けました。


その際、多くの方がアンケートにご回答くださいました。
それは、
・ふだんどんな本を読んでいるか?
・『フロム・ヘル』に興味をもったきっかけは?
・本についての情報をどこから得ているか?
・好きな作家は?
・最近読んでおもしろかった本は? などなど、
その一部については、「アンケート結果発表」としてすでに紹介
しておりますが、その続編をなかなか発表することができず、
今の今までお待たせしてしまいましたこと、まずはお詫びいたします。


このアンケート結果をふまえ、ああでもない、こうでもないと
対策を練り、期待と不安のなかでむかえた刊行日からはや2ヶ月、
書店さんの熱いご対応、掲示板を含めたいろいろな媒体での
厚いご紹介などのおかげをもちまして、この『フロム・ヘル』は
順調に版を重ねることができ、幅広い方々にご購読いただいています。
いろいろな方々に、この場をお借りして、心より御礼申し上げます。


さて、前回は、アンケートにご回答くださった皆さんがふだんどんな本を
読まれているか、そして好きな作家は誰かということについての発表を
しましたので、ここでは、
○『フロム・ヘル』に興味をもったきっかけ
○ふだん本やコミックについてどこから情報を得ているか
○最近読んでおもしろかった本
などについて、発表してゆきたいと思います。


まず、『フロム・ヘル』に興味をもったきっかけということでは、


・以前からアラン・ムーア(の作品)が好きだったから
・以前から海外のコミックに興味があったから


が多く、そのほか、


・映画「フロム・ヘル」公開時に興味をもった
・月刊誌「映画秘宝」でのアラン・ムーア特集
・ラジオ番組『ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル』で、
 高橋ヨシキさんが話していたのを聞いて
・友人や知り合いからの口コミ
・『ウォッチメン』を読んで
・日本語版『フロム・へル』公式サイトを見て


などのご回答をいただきました。
早くからご予約を頂いた皆さんにあっては、
やはり以前からアラン・ムーアを知っている方が多く、
そのきっかけとして、
・アメコミから
・『ウォッチメン』などの映画を含めた過去の作品から
などが挙げられますが、その中でも、映画「ウォッチメン」
公開時にというものから、電撃コミックス版『ウォッチメン』
で知ったというものまで、濃淡があっておもしろい。


では、そんな皆さんがふだん、
本やコミックについての情報をどこから得ているのか、


最も多かったのは、「インターネット上の情報サイト」
・プラネットコミックス
・アメコミクエスト
・2ちゃんねる
など、


そうして「個人のブログ」も多く
・映画評論家緊張日記
・漫棚通信
などなど、


オンライン書店/雑誌/口コミ/新聞書評
予備知識なく書店で出会ったものを
というご回答も少なくない。


これは、刊行前にご予約してくださった方々のアンケートですが、
その中でも、興味の幅や情報の得どころはさまざまであることが
分かりますし、刊行後に『フロム・ヘル』と出会い手にとった人たちは
ふだんどんなものを読み、どこに繋がってゆくのかということも、
興をひかれるところです。


最後に、「最近読んでおもしろかった本」を多い順に紹介します。
著者名については、ほとんどが書名から推定したものですので、
誤りもあるかもしれませんが、「好きな作家は」でのご回答同様、
幅広く挙げてくださっています。



アラン・ムーア『トップ10』、『ウォッチメン』
フランク・ミュラー『バットマン:ダークナイト』


神林長平『アンブロークンアロー』
ニール・ゲイマン『サンドマン』
ロバート・A・ハインライン『夏への扉』


木内一裕『OUT-AND-OUT』/栗本薫『グイン・サーガ』128巻
樋口毅宏『さらば雑司ヶ谷』/磯崎憲一郎『終の住処』/佐藤友哉氏の小説
京極夏彦『厭な小説』/佐藤亜紀『鏡の影』/小池壮彦『怪談FINAL EDITION』
上橋菜穂子『獣の奏者』/有栖川有栖『女王国の城』/森博嗣『少し変わった子あります』
佐々木譲『笑う警官』/貴志祐介『新世界より』/梨木香歩『植物園の巣穴』
吉田豪『BAND LIFE―バンドマン20人の音楽人生劇場』/岡田暁生『音楽の聴き方』
濱野智史『アーキテクチャの生態系』/陣野俊史『ヒップホップジャパン』
小明『アイドル墜落日記』/松沢呉一『エロスの原風景』/高橋洋『映画の魔』
四方田犬彦・鷲谷花『戦う女たち―日本映画の女性アクション』
野上ふさ子『新・動物実験を考える』/森達也『下山事件』
福岡伸一『世界は分けてもわからない』/都甲幸治『偽アメリカ文学の誕生』
近田春夫「考えるヒット」シリーズ/古川琢也 他『セブンイレブンの正体』
小出由紀子・都築響一『HENRY DARGER'S ROOM』
徳川夢声『夢声戦争日記』/『夜のらくがき帳』/石井忠『漂着物事典』
杉作J太郎『恋と股間』/鎌田洋次・プランダ村『ハンサムウーマン』
白土三平『ワタリ』/山田風太郎『太陽黒点』/はるき悦巳『じゃりン子チエ』
根本敬『特殊まんが-前衛の-道』/北野勇作『どーなつ』
横山裕一『アウトドアー』/横尾公敏『ロボット残党兵』/竿尾悟『迷彩君』
みなもと太郎『風雲児たち』最新巻


Alan Moore『Lost Girls』/ポール・ジェンキンス『X-MEN ウルヴァリン:オリジン』
Green Lantern 関連のコミック/スタニスワフ・レム『大失敗』
ディーン・クーンツ『オッド・トーマスの霊感』/キアラン・カーソン『シャムロック・ティー』
フィリップ K.ディック『まだ人間じゃない』/ジム・トンプスン『残酷な夜』
マリオ・プーヅォ『ゴッドファーザー』/レム・コールハース『錯乱のニューヨーク』
ジョゼフ ウォンボー『ハリウッド警察特務隊』/ジョナサン・キャロル『木でできた海』
T・S・ストリブリング『カリブ諸島の手がかり』/ジョナサン・レセム『銃、ときどき音楽』
チャイナ・ミエヴィル『ペルディード・ストリート・ステーション』
オードリー・ニッフェネガー『きみがぼくを見つけた日』
ミルチャ・エリアーデ『令嬢クリスティナ』/ダビッド・ベー『大発作』
ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』/ウラジーミルル・ソローキン『愛』
『フラナリー・オコナー全短篇』/ミシェル・ウエルベック『素粒子』
カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』/イアン・マキューアン『土曜日』
リチャード・パワーズ『われらが歌う時』/ロベルト・ポラーニョ『通話』
カート・ヴォネガット・ジュニア『スローターハウス5』
ピーター・メイル『南仏プロヴァンスの12ヶ月』
F・アッシュクロフト『人間はどこまで耐えられるのか』
ブライアン・カプラン『選挙の経済学』/スティーブン・グリーンハウス『大搾取』
ダン・ガードナー『リスクにあなたは騙される』



このリストを見て、まだ知ることのないジャンルに分け入ってみようかと、
またそれによって『フロム・ヘル』を読むときの視点も変わってきて
それこそ2回、3回と読みなおしてみようかと思って下さる方々がいれば、
これほど嬉しいことはありませんし、もっと広く、一人でも多くの人に、
『フロム・ヘル』を手にとってほしいという気持ちもあります。


今後も、いろいろな場で『フロム・ヘル』が紹介される予定、ご期待ください。


最後になりましたが、
今回のアンケートにご協力くださった皆様、本当にありがとうございました。


柳下さん×宇多丸さんの刊行記念イベント報告

10月23日(金)に新宿ジュンク堂で催されました、
『フロム・ヘル』訳者の柳下毅一郎さんとライムスターの宇多丸さんによる
下記対談イベントの模様を一部ご紹介します。

===============================================
JUNKU トークセッション
2009年10月23日(金)18:30〜
A・ムーア×E・キャンベル『フロム・ヘル』日本語版(みすず書房)刊行記念
柳下毅一郎(翻訳家)×宇多丸(ラッパー)
「コミックで世界を解く──魔術師アラン・ムーアの世界」
===============================================

宇多丸さんと柳下さん

《トピック一覧》

●「ほとんどカメラの動きに近いような指定がある」──スクリプトについて

●「最初の時点で完全にこれ級の構成が出来てないと、 話がはじめられないプロットですもんね」──構成について

●「完全にカモメ捕りに乗せられちゃってるんですが」──ナイトの説と『フロム・ヘル』

●「日本のマンガを読みなれていて、これもマンガだと思って読むと、 これは明らかにマンガじゃない」──日本のマンガとの違い

●「『ウォッチメン』を、ドクター・マンハッタンを主人公にして描くとたぶんこういうふうになる」──『フロム・ヘル』の時空感覚

●「どの程度ムーアは本気でこの説を……」──ムーアのバランス感覚

●「でも“それだけではない部分があるんじゃないか”ってことを信じてるんじゃないかって気がする」──ムーアのバランス感覚、その2

●「われわれ後世の人間たちが、“これはすごい事件だ”ということで事件をほじくり返して、死体を堀り、えんえんと弄んできた」──結末について
〔最後のトピックはネタバレ度が高いので、その点ご留意ください。〕

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「ほとんどカメラの動きに近いような指定がある」──スクリプトについて

柳下:最初にちょっと説明しておかなきゃいけないんですけど、みなさんの席の上に置いてあったのが『フロム・ヘル』のスクリプト、要するにアラン・ムーアが書いてエディ・キャンベルに渡したスクリプトが、たまたまエディ・キャンベルのブログで公開されていたので、今回のイベントのためだけに一部訳してみたものです。5章冒頭の説明

〔訳出されたスクリプトと対応するページが前の画面に映し出される。最初は第五章の冒頭のページ

宇多丸:出ましたね、いやな、いやなセックスシーン。セックスシーンをやな感じで描く作家っていうのは嫌ですね!
聴衆:(笑い)
柳下:これは第五章の第1ページです。要するにムーアが「こういうふうに描け」という指示をエディ・キャンベルに送って、それをもとにしてエディ・キャンベルがこういう絵を描いているということです。全部は説明できないんですけど、帰ってご自宅で絵と比べてみるとわかるのですが、これ、結構(実現した内容とは)変わってるんですね。「最初のコマはオーストリア北部ブラウナウの街の郊外に建つ小さな二階建ての建物の空撮である」っていうんですけど。
宇多丸:全然違いますね。なんか、アパートっていうか。
柳下:これはヒトラー家なんですね。
宇多丸:ヒトラーのお父さんとお母さん。
柳下:どうやらムーアは、ヒトラー家がどういう建物かっていうのがわからなかったので、おそらくこんな感じだろうところを書いていた、と。それをエディ・キャンベルが調べたら、違ったと。
宇多丸:エディ・キャンベルが調べて、“アパートじゃないか、当時住んでたのは。種付けはアパートだった!”と。それを補ってるんですね。
柳下:そう、補ってる。だからそういう部分は結構自由。
宇多丸:自由っていうけど、これ細かいですよね、やっぱり(笑)。
柳下:ものすごく細かい!(笑)
宇多丸:これ(この細かさでの指定)をコマごとにする原作者っていないでしょう、ふつう。
柳下:ご存知だと思うんですけど、たとえば梶原一騎さんの原作って原稿用紙に書いてあるんですよね。
宇多丸:それじゃ小説じゃねえかってことですね。
柳下:そう、梶原一騎さんの原作は小説で、(原稿用紙に)わーっと書いてあるんですけど、これ(ムーアのスクリプト)はコマごとに何をどんなふうに描いてって、細かく指定してあるんですよね。
宇多丸:しかもほとんどカメラの動きに近いような指定がある。
柳下:これ読んでておもしろいのは、“ズームインする”とか“われわれ(紙面を見る人)はどこに居て視点がどこにある”っていうのを細かく指定してあるんですよ。
宇多丸:「われわれはカップルが交接中のベッドを上から見下ろしている」とか。
柳下:映画ですね。
宇多丸:映画の手法というか……
柳下:映画のメタファーをつかって説明してるということですよね。映画のカットを一カットずつ説明しているという感じ。
宇多丸:体位まで指定してありますからね!
柳下:(笑)
宇多丸:ヒトラーが受胎したときはやっぱり正常位だろうってことですかね(笑)。「肉付きは……」とかね。
 ※「わたしは二人はどちらも肉付きのいいタイプであり、肉体的な意味ではとりたてて魅力的ではないと考えている」という記述のこと。

「最初の時点で完全にこれ級の構成が出来てないと、話がはじめられないプロットですもんね」──構成について

柳下:あともうひとページ(第五章、p. 22)、これは殺人が始まるところです。可笑しいんですけど、「このページは七コマで、ガルとネトリー、連続殺人界のローレル&ハーディは……」って、何だそれは?っていう(笑)。柳下さんと5章
聴衆:(笑い)
※ ローレル&ハーディ:サイレントからトーキーの時代にかけて活躍したアメリカの人気お笑いコンビ
宇多丸:……ムーア一流のギャグが入って(笑)。ここは、この二人のずれた掛け合いがいいってことなんですかね?
柳下:ここはギャグの部分で、真っ暗なホワイトチャペル、ホワイトチャペルがいかに真っ暗かというのをここで示しておいて、真っ暗なところで(ネトリーが標的の女に目印として)「黒いボンネットをやった」って……見えねえだろう!っていう。
宇多丸:なるほどそういうことなんだ!
柳下:(ガルが)「お前のいちばんはっきりした特徴はなんだかわかっているか?」(ネトリーが)「いえ、考えたことないです」(ガル)「それだよ」っていう(笑)。
聴衆:(笑い)
宇多丸:ああ、ギャグなんだ、“黒いボンネットとは思慮深きことよ”(ガルがネトリーに言うセリフ)ってそういうことか!
ボンネットのコマ柳下:あと、ここも(スクリプトと実際のページでは)変わってて、ス クリプトでは最初のコマがセリフなしの予定だったんですが、上が詰まりすぎるからセリフの始まりを一コマずらした。でもこのあたりは、前後のページを見て いくとわかるんですが、すべて七コマの並びなんです。最初の六コマでストーリーをやって、七コマ目にホワイトチャペルの情景を入れるっていうページが何 ページか続いているんです。
宇多丸:この大ゴマがあって、細かいリズムが続いて、また大ゴマっていう、そういうリズムで読ませるってことですね。
柳下:だからムーアは一コマずれたらそのリズムが壊れるってことを気にしていたということなんですが……そんなの(読んでいるほうは)わからないですけど。
宇多丸:でも要は、アラン・ムーアとしては本になったときのリズムとか構成が完全に頭の中で出来ているってことですよね。
柳下:何がすごいって、この本って十年かけて描いているわけじゃないですか。
宇多丸:しかも途切れ途切れでね。
柳下:そう、途切れ途切れでほぼ十年かけて描いてるんですけど、それでこの構成が全部出来上がっているのはすごいですよね。
宇多丸:最初の時点で完全にこれ級の構成が出来てないと、話がはじめられないプロットですもんね、これは
柳下:これを読んでてもよくわかるんですけど、ムーアってすごいコントロール・フリーク。自分ですべてをコントロールしないと気が済まないって人で、コントロール・フリークっていう人はふつうによくいるんですけど、このレベルで出来る人はなかなかいないですよねえ。

「完全にカモメ捕りに乗せられちゃってるんですが」──ナイトの説と『フロム・ヘル』

宇多丸:切り裂きジャックをめぐる話として(『フロム・ヘル』の原作の)元にしたってムーア本人が言ってるスティーブン・ナイトの『最終結論』──〔持参の『最終結論』を会場に示しながら〕自分がこんなもん買うようになるとは思いませんでしたけど(笑)。完全にカモメ捕りに乗せられちゃってるんですが(笑)。
柳下:これ読もうと思ったのは『フロム・ヘル』読んでからですか?
宇多丸:読んでからですよ、もちろん。だって註釈読むだけで、こんなもん(『最終結論』)読んじゃダメって思うじゃないですか。マズい本だって。
柳下:これは結構あぶない本ですよね。
宇多丸:あぶない本ですよね。これだけ読んだら「こんなもん真に受けるか!」って話なんだけど。アラン・ムーア自身はこれ、「スイス時計のようによくできた理屈だから」って言ってるんですけど……そんなにこれ自体は緻密な説じゃないんですよね。
柳下:そんなたいしたことない。思いつきと噂話で“こんな感じかな?”っていう程度の(笑)。“フリーメイソン、どうも怪しいぜ、あいつらは”というレベルの話で、『フロム・ヘル』みたいに緻密な、精密な、それこそまさにスイス時計のような細工ではないですよね。
宇多丸:だからこれ、スイス時計にしたのは実はやっぱりアラン・ムーアなんですよね。ものすごい雑な歯車がムーアには(『最終結論』を読んだときに)見えて、「ああ、これ、こっちに繋げればものすごくいい機械できるんじゃない?」ということかと。
柳下:「こいつ発想はいいけど、ちょっと甘いんじゃない?」って、つい、組み直してきっちり作っちゃう。
宇多丸:そうしたら「このほうがいいじゃん」みたいな感じになって、それで、たぶんこれから僕らが切り裂きジャックの話を何度聞かされても、あの説得力にはかなわねえなと思わされる物語が出来たわけですよね。どう考えてもこんな話あるわけないのに(笑)、こうだったとしか思えなくなっちゃって……っていうぐらいよく出来た話になっちゃうんですね。

「日本のマンガを読みなれていて、これもマンガだと思って読むと、これは明らかにマンガじゃない」──日本のマンガとの違い

宇多丸:(会場に向かって)みなさんこれ、こういう話してますけど、「ネタバレだ!」とか怒り出す人はいないんですかね? まだ読んでない人。
柳下:まだ読んでない人がこれ聞いても全然何の話かわからないですね(笑)。
宇多丸:まだ発売から日にちが経ってないんで、まだ一周目か、二周目はいったぐらいの人が大半だと思うんですが。僕はもうさすがに三周目来まして、プルーフ版が汚くなっちゃってます。
〔※宇多丸さんには発売の約ひと月前に「プルーフ版」という、校正用に製本した『フロム・ヘル』のゲラ刷りをお送りして、早めに読み始めていただきました。〕
 まず、ふつうに一周目の時点で、無類のおもしろさでしたね。最初はちょっと読みづらいというか、とっつきにくい部分もあるんですけど……僕はまったく切り裂きジャックについて明るくなかったんで。でも、読み進めるうちに「こういうことか」ってわかってくるとどんどん、どんどんおもしろくなって。
 で、何しろ二周目以降ですよね! 『ウォッチメン』のときもそうでしたけど。最初はそれこそスイス時計のよく出来た動きを見て「ほー! はー!」となるだけなのが、作者自身による註釈とか、「カモメ捕り」の話を見てからまた(本編に)戻って読むにつれて……だから、いま、三周目でまたこんな余計な(笑)書物をいろいろ買ってですね〔持参の複数の参考文献を聴衆に見せながら〕、読み続けているという次第ですけれども。たぶんみなさんもここの解説(「カモメ捕りのダンス」)どおりになってしまうんじゃないですかね。
柳下:読みづらいという話がありますが、読みづらい理由にはいくつかあると思うんですよ。一つには、マンガじゃないということ。日本のマンガを読みなれていて、これもマンガだと思って読むと、これは明らかにマンガじゃない。手法が全然違って、日本のマンガでこういうコマ割りってありえない。
宇多丸:そうですね。(日本のマンガは)コマ割り自体に動きがあるような表現ですね。
柳下:コマの大きさが……重要度じゃないですか、日本のマンガって。大きなコマのほうが重要で、ちっちゃいコマがつなぎのコマであるっていう。そのコマの大きさで強弱をつけてリズムをつけて、動きを見せている。だけどこれって〔『フロム・ヘル』のページを見ながら〕、アメコミの描き方なんですけど、動きってないんですよね。動きはコマの中だけにあって、たとえばここで〔第五章、p. 22の最初の数コマを見ながら〕ガルが手にもった筆の動きが3コマで表現されてるんですけど、描かれているのは全部動きの途中(の瞬間)で、動き自体は読む人が補完してやらなきゃいけない。しかもこれが、動きとしてはたいした動きじゃなくて、ガルがしゃべりながらしていることですよね。日本のマンガだったらこういうシーンはたぶん描かない。描くと、『ジャンプ』の編集者が……
宇多丸:担当者に怒られるってことですよね(笑)。
柳下:「こんなネームはいらねえよ」ってことになると思うんです。「こんな部分はコマを割るんでなくて絵の動きで説明するのがマンガだ」と。だから全然マンガの見方が違って、この動きと絵の意味というのは、“真っ暗ななかでこの動作をしている、黒いボンネットがみえないぐらい、ホワイトチャペルは真っ暗である”と。当時のホワイトチャペルは街灯ももちろんほとんどないですし、闇の中ですよね、夜は。で、おもしろいのは、光がどこにあるかまで細かく描いてある。本来(この場所で)こんな情景が見えるはずではないんだけど、たまたまこういう光が当たっているから見えます、ということまで説明してあるんですよ。ヒトラーの家のなかでどこに灯りがあるから何が見えている、というようなことって、日本のマンガではここまで考えない……               (光には必ず光源がある↓)
宇多丸:もっと高度に抽象化されたマンガ表現のなかでお約束になった表現ですよね。
柳下:日本のマンガだったらもっと馬車を(闇の中に)浮かび上がらせて描いちゃうと思うんですよ。それはやらないで、暗くて見えないものは見えないように描くということをやってしまう。そういう意味でも文法が日本のマンガと違うんで、(読み手が)たぶん慣れるまでは一枚の絵をじっくり読むということができなくて、普通に読むと読み飛ばしちゃうと思うんですよね。
宇多丸:そうですね。
柳下:日本のマンガのつもりで、ふつうにネームだけ読んでると、たぶん「ネーム多いなあ」とか思いながらふつうに読んでしまうんだろうけど、ほんとはそうじゃなくて、一枚のコマ、一枚の絵の中にすごく……
宇多丸:情報が圧縮されてる。
柳下:それを全部読み取ってやらないと、たぶん読んでることにならない。
宇多丸:……読んでると疲れるっていうのはそういうことですよね。一コマ一コマ読まないといけないんですもん。で、特に最初のほうは、まだ殺人も起こっていない、派手な場面が一つもないなかで、えんえんと、アンタ何言ってんの?!っていうセリフが続くじゃないですか(笑)。
柳下:これ昔よくいわれてたことなんだけど、原書で読んだ人はだいたい四章で挫折するんですよね(笑)。
聴衆:(笑い)
宇多丸:ネトリーと街の中をまわるところですよね。まあ、ネームも多いですし……
柳下:何言ってるんだか分からないですね(笑)。日本語で読んでも何言ってるか分からない。
宇多丸:当たり前ですよね、要するにこれ、キチガイのたわごとという(笑)。非常に緻密に構築されたたわごとということですからね。
柳下:妄想ですから(笑)。ひたすらね。
宇多丸:妄想で、妄想なんですけど、その一つ一つは物語上はのちほどちゃんと意味を持ってくるし、一周してからだと、この一つ一つのたわごとの意味も分かってくるんですけど、最初はキツいですよね、ここ。
柳下:そこで挫折する……全然事件も起きないし、何が起きてるんだろう?と。
宇多丸:何をやろうとしてるのかもわからないですしね。
柳下:そのうち徐々に、一つ一つの要素が意味を持ってきて、すごいなと。
宇多丸:そうですよね。そこで「わあっ…!」ときますもんね。

「『ウォッチメン』を、ドクター・マンハッタンを主人公にして描くとたぶんこういうふうになる」──『フロム・ヘル』の時空感覚

柳下:このマンガの中心的なアイデアがいくつかあって、一つは、ガルの友人だったジェイムズ・ヒントンの息子のC・H・ヒントンっていう人の時空間理論。
宇多丸:
『第四の次元とは何か』っていうやつですね。ネーム多いなあ
柳下:ヴィクトリア時代の科学ロマンとしてSFファンは知っているぐらいの、ちょっと有名なものなんですけど、それは“すべての時間はすでに起こっている──時間というのは第四の次元であって、その軸の上を前後に移動できるように次元としては存在している。すべてのことはすでに起こっていて、そのなかを人間の意識が移動しているだけだ”という……
宇多丸:三次元的な人間の意識では“部分”しか捉えられないけど、常に“全体”が存在しているんだということですね。
柳下:そうですね。人間というのは過去から未来までつながった生き物で、時空間的に四次元の人から見ると、そのムカデのような生き物がいっぱいいて、動いているように見える、と。たまたまわれわれはその三次元の世界だけを見ている、という理論があって、それで最終章でガルがそのすべての時空間をいったりきたりするっていう。
宇多丸:アラン・ムーアのわりと好きな展開の仕方ですよね。ドクター・マンハッタンの述懐とか。
柳下:これはムーアのほかの作品にも出てくる見方で、この作品では時間的にも大過去から現在までつながっている。空間的にもヴィクトリア女王から最下層の人たちまでつながってる。その全体の切片としてバッと切ったのが切り裂きジャック、“切り裂き”ですよね。一断面としてこのマンガがあるわけですけど、世界は過去から未来までずっとつながっているという世界観をマンガで表現することに、この作品でトライしてるんじゃないかと。
宇多丸:切り裂きジャックの事件をとおして、世界全体を描ききる……
柳下:説明するというかね。
宇多丸:やっぱり説明フリークでもありますよね(笑)。すべてのことに対して説明フリークでもある。
柳下:これね、『ウォッチメン』を、ドクター・マンハッタンを主人公にして描くとたぶんこういうふうになる。『ウォッチメン』にドクター・マンハッタンの語りの章がありますよね。
宇多丸:火星に行って、もろもろ振り返るところですよね。あれを全体にわたってやるとこうなるってことですね。
柳下:あそこの部分の時間感覚をもってきている。
宇多丸:最初のほうだと小出しになってるけど、だんだんそういう感覚になってきて……ガル自身も突然、ふと窓の中を覗いたら未来が見えて、窓の反対側の人から見ると、昔のオバケみたいなものが見えるんだけど、という解釈になっていたり。
柳下:あれはうまいですよね。
宇多丸:しかもあれがまた、コマとしては何気ない小さいコマで通り過ぎちゃうから……。
柳下:
そして補遺を見ると、ちゃんと「こういう事件があったんだよ」って書いてあるという。
宇多丸:「あるんだ、裏付け……!」って(笑)。
柳下:第四章のガルの言っているたわごとの部分では、紀元前二千年というような大過去からはじまっていろんな史実をロンドンの場所に当てはめていくわけですよね。時間がつながっているのであれば、すべての土地が過去をもっている。その土地がもってる過去もそこに存在しているので、その場所に自分が居る、ある場所に立つということは、その場所がもつすべての過去を受け止めることである、と。
 歴史上のことだけじゃなくて、人間が考えること、つまりフィクションということですが、第四章でガルが言っている神々についての“史実”も、小説も、心霊現象もフィクションとしては同じですよね。そのすべてをその場所で感じることができる、等価のものとして感じられるというのが、第四章で描いていることだと思うんですね。第十四章ではガルがすべての時空間を旅して、いろんなものを見るということを描いていますが……
宇多丸:第四章で、それと同じことをやっている、と。
柳下:ガルにとっては同じことをやっている。それはつまり、われわれ(読者)にもそれと同じことができるんじゃないか、という話ですよね。
宇多丸:まさにこの本を読むこと自体が、そういう体験でもあるし。

「どの程度ムーアは本気でこの説を……」──ムーアのバランス感覚

宇多丸:だってこれ、(翻訳に)何年間かかったんですか?
柳下:まあ三年、実質的には二年ぐらいですかね。
宇多丸:二年読んでればもう確実に、毒牙にかかってますよ。
柳下:もう僕完璧に、頭がおかしくなってますからね(笑)。
宇多丸:説明フリークであるムーアの理屈と、こういう陰謀論的の人たちの相性のよさというのもありますよね〔ふたたび『最終結論』をとりあげながら〕。こういう人たちって何にでも関連付けて説明できる気になっちゃうところがあるけど、ムーアのはもうちょっと緻密な妄想というか……
柳下:……というかムーアは信じてないですよね。
宇多丸:そこ! 僕、そこの距離感の話なんかも聞きたかったんですけど。どの程度ムーアは本気でこの説を……
柳下:そこに関しては僕もいまひとつよくわからないというか、すごくおもしろくて、特に補遺とか、最後に付いている「カモメ捕りのダンス」とか読むと分かると思うんですけど、ムーアという人はものすごく頭のいい人ですよね。
宇多丸:(「カモメ捕りのダンス」では)すごく突き放して書いてますよね。
柳下:すごく頭がよくて、のめりこまない。のめりこまないんだけど、同時に……のめりこまないと、こんなもの書けないじゃないですか(笑)。そこのバランス感覚が不思議ですよね。
宇多丸:不思議な人ですよね。これを読んでも、ものすごくおもしろいし、こういうことがあったかもしれないという気になるけど、最後の(補遺)を読んで突き放されて……こちらもどうしていいかちょっとわからないぐらいの感じですよね。
柳下:註釈を読んでも、ここは事実でここの部分は自分の創作だとか、ここはこう書いたけどたぶんこれは本当ではないよとか、とても細かい部分までやっているので。本人はたぶん、これ(『フロム・ヘル』の筋書き)はあくまでも“こしらえもの”という捉え方ですよね。……可笑しい話があって、ムーアという人は魔術師なんですよね。
宇多丸:文字通りの意味でね。
柳下:本当に魔術をやってるんです。「言葉の魔術師」というような言い方がありますが、そういう比喩じゃなくて、呪文を唱えて儀式をやって呪いをかけたりとかしてるんです。
宇多丸:こんだけ頭のいい人が。五
柳下:そうなんです。そういうのがもともと大好きなんですよね。オカルトのファンの人たちの大会のようなところにムーアが行ったことがあるらしくて、そこで『フロム・ヘル』の読者がやってきて、「ムーアさん、あれはすごいです! あれは本当ですね。あんなところに五芒線形がある!」と言ってきたので、ムーアが「ロンドンなんて歴史があるんだから、適当な場所をとってつなげば五芒線形なんていくらでもできる」って(笑)。
宇多丸:えーっなんでそんなことを!(笑)
聴衆:(笑い)
宇多丸:またまた、ムーアさん、ちょっと、そんなぁ……あんだけ組み立てといて(笑)。
柳下:いくら説明しても、相手が完璧に信じ込んでいて「これは悪魔の業だ!」だとか言って信じてくれないので、耐えられなくなって行くのを辞めたとか。そういう場所に行くのを辞めただけで、自分独りで魔術はやってるんですけど。

「でも“それだけではない部分があるんじゃないか”ってことを信じてるんじゃないかって気がする」──ムーアのバランス感覚、その2

宇多丸:まさにガルが、ここ(第四章)で言っている理屈みたいなことを考えているんじゃないですか? 自分の理性の部分がガッチリあるのは当然で、でもそれを敢えて切り離すのだっていう理屈を言ってるじゃないですか。魔術師
ここで言っているガルの理屈が、ムーアが考えてることに近いのかなと思ったんですよね。ガルは迷信とかそういうものはくだらんと言って、むしろ科学的な思考の信奉者なんだけれども、それを蘇らせるのに使う手法が魔術的という。
柳下:そうなんですよね。この中でガルも、五人を殺すこと自体、殺すという儀式によって超自然的なことが起こるとは思ってないですね。出てくる超自然的な出来事も、本当に起こってるかどうかはわからないです、だってキチガイの妄想なんだもの。
聴衆:(笑い)
柳下:読んでいると、ガルが殺人のなかにおいて未来を幻視したかのように見えるんですけど、それも所詮……
宇多丸:キチガイの妄想。
柳下:そう、ガルがそう思っているだけで、この人は誰がみても頭がおかしいわけですし。作中でもあいつは頭がおかしいって、えんえんと言われ続けていますからね(笑)。
宇多丸:考えに考え抜いたコントロール・フリークが、自分の理屈の先にちょっとおかしい状態になっていっちゃうというか、そこがちょっとアラン・ムーアっぽいと思うんです。ご自身もきっとそういう作品づくりをしているんじゃないかって。で、最後にまた、シラフに戻っていくというか。だって、おかしくないと作れないでしょう、第十章とかは。コントロール・フリーク
柳下:でもこれ以外の作品を読んでいるとね、結構本気の部分もあるんじゃないかって気もするんですよ。
宇多丸:本気のとこもある?
柳下:(ムーアは)このストーリーはフィクションだと捉えてるし、切り裂きジャックがフリーメイソンの儀式として殺人を犯したというのも、こしらえもの、おもしろいフィクションとしてしか受け止めていないんだけど、じゃあ、それがまったく根も葉もないことかっていうと、そうじゃなくて、つまり、世界のどこかには……何か、真実が(あるかもしれない)。僕がいちばん(ムーアにとって)本当だと思うのは、最後のエピローグのところで老人となったアバーラインとリーズの二人が、“われわれの知らないところで、何か起きているんじゃないか”ということを話し合うシーンがありますよね。“われわれは真実を知っているけど、他の人はほとんど知らない。こういうことがほかにもあるんじゃないか”って。その実感、それがムーアの実感にじゃないかって気がするんです。自分はいろんな本も読んで、わかっていることはわかっている、でも“それだけではない部分があるんじゃないか”ってことを信じてるんじゃないかって気がするんですよ。

柳下: ムーアって人は、僕は実際会ったことはなくて書いたものでしか知らない人ですが、すごく頭のいい人ですね。これぐらい頭がよくて、冷静に陰謀論を読んで「これはくだらないね」ってはっきり言えるぐらいの知性のある人だと、ふつうは不可知論者になっちゃう。というか、“わからないことを考えてもしょうがない。世界の闇なんてものは、関係ないんじゃない?”って言えちゃうと思うんですけど、(ムーアは)それを言わないですよね。自分でもわからないところに何かがあって、精神と神それが人間の本質なんだ、みたいなことをわりと本気で思っていて、本気で言う。
 第四章の、ガルがえんえんとたわ言を言い続けるところで、“議論の余地なく神が存在するのは、われわれの精神の中だ”っていうことを言う場面がありますが、ムーアはこのセリフを自分で書いていて、「ああ、これだ」って思ったって言うんですよね。それから、俺の心の中にある神を蘇らそうというんで魔術師になるんですよね(笑)。魔術師になって、儀式をやって蛇神を呼び起こしたりしてるんですけど(笑)。
宇多丸:そこもやっぱりアーティストの部分ですよね。作品をアートたらしめるためには、不合理な部分も合理的に呼び寄せてるというか……
柳下:“合理的”なんでしょうか(笑)。
宇多丸:でも、ちょっとおかしな状態にもっていって、理屈で考えても出てこないものを出そうという。そこもアーティスト的発想というか、ね。
柳下:魔術師で黒魔術だっていうと、ふつうは悪魔を呼び起こすというような話じゃないですか。ムーアの言っている魔術というのは、人間主義というか、あくまでも人間のなかに何かを起こすという話ですよね。
宇多丸:それがこの作品の中のガルっぽいですよね。すごく重なるんですよね。あんまりこういう読み方をしてはいけないんだろうけど、アラン・ムーアとこの中のガルを重ねちゃうんです。
柳下:“敢えて非合理に踏み込む”っていう部分の重なりは、あると思います。註釈でムーアは、ガルの中に切り裂きジャック的な部分があるとしたら、それはガルの性格の人好きのする部分じゃないかということを書いているんですが(補遺p. 34の左上)、そういう書き方をしているということは、それと一緒でムーアの中にもガル的な部分、この作品における切り裂きジャック的な部分はあるということですよね。自分=(イコール)これ、ではないけれど、この中に自分と近しい部分があって、その部分の表現がこのマンガなんだということでしょうか。
宇多丸:そういうふうに思いましたね。だから、ものすっごい精緻に組み立てられた非合理というところが、“これこそ、アラン・ムーアその人”というような作品なのかなと思いました。何かに対する批評というよりも、むしろ。

「われわれ後世の人間たちが、“これはすごい事件だ”ということで事件をほじくり返して、死体を堀り、えんえんと弄んできた」──結末について
〔このトピックはネタバレ度が高いので、その点ご留意ください。〕

宇多丸:これ、みなさんもう読まれた後だと思うんで、僕も読んでよくわからないことについて質問してもいい時間ですかね? ていうかこれ、一番わかりやすいとこなんですけど、アラン・ムーア自身が註釈で、「そこはまあ、ほら、みなさん自分で考えてくださいヨ!」って言ってる部分があるじゃないですか(笑)。
聴衆:(笑い)
柳下:結末の部分ですよね。
宇多丸:最後の、ガル博士がお旅立ちになる寸前に見る幻ですよね。アイルランドで、女がいて、っていう。これは要するに●●●●●●●●●●●●●●ということですよね。
柳下:はい。
宇多丸:アイルランドでね。見たことのない女がいてね(笑)。
柳下:実はこれ、いろいろ毀誉褒貶ある映画版『フロム・ヘル』、ヒューズ兄弟の映画版──
宇多丸:あの映画版『フロム・ヘル』も、一応そこは受け継いでいる、と(笑)。あれは……オモシロイですよね。
聴衆:(笑い)
柳下:これ(映画版)だけ見ると別に悪い映画とも思わないんですけど、原作読んでから見ると、「ありえねえだろ、これ」っていう……(笑)。
宇多丸:で、この子どもたちに、殺されたみなさんの名前をつけているという理解でいいんですね。で、あの部屋で死んでいるのはたぶん●●●●とか、ってことですよね。
柳下:ですよね。僕が読んでて「あ!」と思ったのは、最後の補遺の「カモメ捕りのダンス」の中でも……あるいは冒頭の献辞で五人の女性に……
宇多丸:“あなたたちの存在だけは確かだ”と。
〔ここでお客さんから間髪入れず、献辞の表現は正確には「存在と死」だという厳しい指摘が入る
宇多丸:あ、「存在と死」、失礼いたしました。
聴衆:(笑い)
柳下:五人の彼女たちの存在と死だけが確かなことだ、というセリフがあります。彼女たちは、本当に死んだわけですよね。五人の女性は惨たらしく殺された。アラン・ムーアも含めた話としてわれわれ後世の人間たちが、“これはすごい事件だ”ということで事件をほじくり返して、死体を堀り、えんえんと弄んできた。それはまさに、彼女たちの死を弄んできてるんじゃないかというふうにムーアは……
宇多丸:さらにその弄び方もねえ、ここ(「カモメ捕りのダンス」)にも書いているけれど、「あんな目に遭ったからには、何かをやったに違いない」という、死んだ人に何かの罪を付すような部分もあったりとか。
柳下:そういうふうにしてきた。当然ムーアはこの作品をやりながらそれを感じていたと思うんですけど、
宇多丸:“俺も同じ穴の狢だ”というようなことは言ってますよね、この中で。
柳下:(結末は)そういうことに関するムーアの罪滅ぼしというか、ムーアの優しさなんじゃないかと思っていて。つまり、彼女たちの死はほんとうだとムーアはわかってるんだけど、彼女たちの死に一つのフィクションとしての救いを用意してあげたんじゃないか、と。ムーアはフィクションを紡ぐ人ですから、彼が与えられる救いというのはフィクションの中での救いでしかないわけですね。でも、死んだメアリー・ケリーという女性、一番酷い目にあった女性、そしてその死後もわれわれが寄ってたかって解剖して、死体写真を見て、解剖してきた死に対する、贖罪というか……救いをここで与えてあげたんじゃないかと。ムーアの優しさなのかなこれは、と思ったんですよ。
宇多丸:そう考えると、ものすごく感動的な一ページですよね、これは。

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以上がイベントの前半からの抜粋です。このあと、
●『フロム・ヘル』の舞台を写真付き(柳下さんの“巡礼”の旅のお土産写真)で巡るスライドショーホークスムア

●アラン・ムーアのその他の作品の解説──幻の作品から邦訳が待たれる超大作までの数々を、実物を見ながら
●ここにはあまり詳細を書けない、楽しい映像の鑑賞
 (右の写真にちらっと映ってますが)
●アラン・ムーアのサイン入り『V For Vendetta』(原書、柳下さんからの倫敦土産)プレゼント(一名様)のためのジャンケン・ゲーム
などがありました。
(その一部はできればまた、ここへの追記のかたちでご報告したいと思っています。)
参加者のみなさんはお腹いっぱい楽しんでくださったかと思います。
柳下さんと宇多丸さん、たいへんお疲れ様でした!

今回イベントに来てくださったみなさんは、お二人のトークへの異常なまでの理解の深さを示す細かいリアクションから(笑)、すでにかなり『フロム・ヘル』を読み込んでおられるツワモノばかりとお見受けしました。
しかしそんなみなさんにとっても、『フロム・ヘル』にいちばん驚かされる瞬間はまだ先にあるのかもしれません。というのも、最初に何回か読んで、それから2、3年してからふと読み返したときにまた、この絵の力、視覚的な表現の底力を真に思い知らされるような本だからです。高価なコミックですので、そんなふうに長くお付き合いいただきたいです。
ご参加のみなさん、お疲れ様でした。


各種メディアでご紹介いただきました(2/9更新)

全部はフォローできていませんが、
情報のアーカイヴのためにも、とりあえずわかっている範囲で
できるだけご報告しておきます。

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●『実録 殺人事件がわかる本 2010 Spiring』
(別冊映画秘宝 マーダー・ウォッチャーVol. 6)
(2010年2月8日発売)

『フロム・ヘル』訳者の柳下毅一郎氏の監修によるこのムックに、
「完全保存版! 『フロム・ヘル』刊行記念
切り裂きジャック事件、再入門」
という豪華特集記事が組まれています!!


特集の最初の部分では事件の詳細・背景を
効率的におさらいしてくれていて、わかりやすいです。
さらに『フロム・ヘル』の登場人物紹介が載っているので
ページを切り取って『フロム・ヘル』に挟み込んでおいても
重宝しそう。


この雑誌ならではの踏み込んだコンテンツも収録されていて、
たとえば「文明開化の切り裂きジャック」という記事(会津信吾氏)
では、この事件を当時日本で報道していたメディアを追跡。
"Jack The Ripper"というニックネームまで明記された
国内最初(明治22年1月)の新聞記事が紹介されています。

●『本の雑誌』(2010年2月号)
コラム「柳下毅一郎の特殊な本棚」で、
『フロム・ヘル』に関連して
アラン・ムーアの“魔術的パフォーマンス”の
シナリオをエディ・キャンベルがコミック化した本、
A Disease of Languageが紹介されています。
(文字どおり特殊な本棚ですね……。)

●『婦人公論』2/7号(1/22発売)

渡邊十絲子氏による書評。
「すでにあちこちに絶賛書評が出ているが、本誌読者にも
ぜひおすすめしたい。
……人間の狂気が行きつく果ての恐ろしさを、
どうぞご堪能ください。」


●第1回 AXNミステリー 闘うベストテン(2009年12月27日)

AXNミステリーチャンネルの書評番組
「第1回 AXNミステリー 闘うベストテン」で
なんと『フロム・ヘル』が2009年の第1位に選ばれました。
『このミステリーがすごい!』海外編でのランクインに続き、
またもやミステリー読みの方々からの評価。
こちらで↓視聴できます。
http://mystery.co.jp/program/best10/201001.html

●朝日新聞(12月27日付)
瀬名秀明氏が2009年の3冊のうちの一冊目にとりあげてくださいました。
限られた文字数の中で、評者の感じたことがひしひしと伝わってくる見事な書評です。
「切り裂きジャックの視点のみで構成された章を読み進める頃から
物語表現の限界へ突き進もうとする作者らの気迫に圧倒され、
ついにジャックが殺人を犯すに至って緊張はピークに達し快楽へと転ずる。」
「読了後も疼きが治まらなかった。」

●産経新聞(12月20日付)
コラム「邂逅 カルチャー時評」(中条省平氏)にとりあげていただきました。
「『このミステリーがすごい!』(宝島社)や『このマンガを読め!』(フリースタイル)は
毎年楽しみにしているのですが、今年はこの両方のベスト20に入る作品が出ました。
前代未聞の出来事です」と気づいてくださっていることも、
「真価は、作品を貫く神秘哲学の強度と、作画を担当したエディ・キャンベルの
筆致の痙攣的な鋭さにあります。」という指摘も嬉しい書評。
「大判2巻本の大作ですが、作品世界に深く引きずりこまれることは必至です。」

“あのお堅いみすず書房”から出たのも“珍事”と特筆されており、
小社から出たことが「シーラカンス発見!」的なサプライズになっているようで
話題にしていただいて光栄なような、でもちょっと哀しいような……。

●『一冊の本』(2010年1月号)
上野昴志氏によるコラム「ヴィジュアル本を楽しむ」でとりあげていただきました。
静止画と静止画の“行間”を読み解かせる、海外コミックの文法が
専門家らしい目敏さで詳しく紹介されています。
「ここで改めて眼を見開かされたのは、コマ割りされた静止画のもたらす緊迫感である。」
「「グラフィック・ノベル」のダイナミズムは、このような静止画とコマ割りのメカニズムに
支えられているのだが、それは、もしかしたら、流動的な動き主体のマンガからは
失われたものかもしれない。」
グラフィックの評価に力点が置かれている貴重な書評ですね。

しかし記事の締めくくりのところで、
第七章にテレビが出てくるのは“画家のお遊びだろう”というコメントがあるので、
宇多丸さんと柳下さんの対談イベントのレポートを読んだみなさんなら
「上野さん、それは違うんです〜!」とツッコミたくなるかも。

●北海道新聞(12月13日付?)
書評をいただいたそうなのですが、まだ実物を確認できていません。


●『このマンガを読め! 2009』(12月12日発売)

16位にランクイン!

コミックという土俵で紹介していただいたというのがすばらしい!


●『このミステリーがすごい! 2009年版』(12月5日発売)
なんと海外部門の20位にランクイン! コミックなので選ぶべきかどうか
迷われた審査員の方々もおられただろうに、
ミステリ読みのみなさんにも本当に熱い支持をいただきました。

●『往来っ子新聞』(通算25号)
往来堂書店という、千駄木にある書店さんの瓦版です。
「小津安二郎にも通じるカメラワーク」が特筆されています。
小さな書店さんが、この大判の本を平積みにして
推してくれているというのも、たいへんありがたいことです!
『往来っ子新聞』は店頭で無料配布されています。


●『漫画アクション』(12月1日発売号)
西祥平氏のコラムで触れていただいたとのこと。


●『DIME』(2009年12月15日号)
●『UP』(2009年12月15日号)
以上2誌、豊崎由美さんに書評をいただきました。
『UP』のほうは「海外文学下半期おすすめ市」という
記事のなかでとりあげられており、ほかに挙がっているのは
レベッカ・ブラウン『犬たち』
リュドミラ・ウリツカヤ『通訳ダニエル・シュタイン』
リチャード・フラナガン『姿なきテロリスト』
ロイド・ジョーンズ『ミスター・ピップ』
ジョージ・R・R・マーティン『洋梨形の男』
です。『UP』は山口晃さんの漫画も読める、東京大学出版会のしぶいPR誌。

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『TV Bros』(11月28日号)
豊崎由美さんの書評コラム「帝王切開 の斧」でのご紹介。
豊崎さんはあちこちで本書を取り上げてくださっていますが
このTV Brosの書評は特に、引用をうまく使って
4章、10章、14章という3つの山場それぞれの凄みの違いを
書き分けてあり、迫力満点です!


対向ページを見ると、別冊映画秘宝『東宝特撮総進撃〜
東宝特撮映画全89作品が巻き起こす世紀の大決闘!』
のレビューがあって、柳下毅一郎氏がガル博士とか
パーマー・エルドリッチばりに遍在しはじめたかのように
見えてしまいます。
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『ミステリマガジン』2010年1月号(11月25日発売)

以前からお知らせしていた風間賢二氏の書評。
「映画のストーリー・ボードを思わせる
スケッチ風のミニマルな絵が、
幾重にも折り合わされている時空間の世界を
殺伐と表象していて戦慄ものである。」

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ダカーポ特別編集『最高の本! 2010』(11月18日発売)
「本の目利きが選んだジャンル別最高の本」特集で、
「海外文学」部門の選者の豊崎由美さんにご紹介いただきました。
『フロム・ヘル』の次に紹介されているのが
『やんごとなき読者』(白水社)で“女王つながり”という、
畏れ多くも楽しいページになっております。
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『毎日新聞』(11月15日付朝刊)
富山太佳夫氏による書評。
「白黒の画面の使い方、歴史的事実の取り込み方、
そして、そう、セリフだ。セリフのみごとさが、
過剰と思えるほどの黒い画面の多用に奥行きと意味を与えている。
こんなにすごいマンガ、正直なところはじめて見た。」
ベッドではなく体を支える紐を与えられるだけの宿を描いたページ
(上巻5章、p. 5)も合わせて紹介されました。
隣に「のんきな父さん」の1ページが並んで意味不明な感じもご覧あれ。
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『東京新聞』「大波小波」(11月11日付夕刊)
「暁の女王」氏による書評。
「その偏執的な徹底性はジェラール・ド・ネルヴァルを思わせるといったら
誉めすぎだろうか。ともあれ、とんでもない作品が翻訳・紹介された
ものである。」
この形容は、ムーアが聞いたらニヤリとしそうですね。
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『熊本日日新聞』「豊崎由美が読む」(11月8日付)

熊本日日新聞の長文書評コラムにて、豊崎由美さんが

『フロム・ヘル』をとりあげてくださいました。

「知的で戦慄的な物語」という見出しが大きく掲げられ、

「今年の翻訳物で一番の話題作にして傑作と断言いたします。」

という言葉で締めくくられています。

それにしても熊本日日新聞は、「日本一とんがっている地方紙」

と言ってもいいのではないでしょうか。

熊本の人たちがちょっと(かなり)羨ましい。

都内でも、もっと熊日を購読する図書館があってもいいのでは!

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AXNミステリー「Book倶楽部」(11月号、2009)

スカパー!、CATVなどで視聴できるAXNミステリーチャンネルの番組。

パーソナリティの皆さんが「これには参った!」という作品を紹介するというコーナーで

大森望さんにとりあげていただきました。

豊崎部長さんも一押し作品に選んでくださったので、

視聴者プレゼントで『フロム・ヘル』が3名様に当たります。

『フロム・ヘル』のトレーラーがTVの画面いっぱいに流れ、

しかも大森さんが、ヴィクトリア女王の出てくるところが好きだとコメントするやいなや

ヴィクトリア女王がぼよーんと登場する場面がまた画面いっぱいに(笑)。

「マイミス!」のコーナーの動画はWeb上で見られるようになっています。
http://mystery.co.jp/program/book_club/200911.html
11月中は再放送があり、今後の放映は以下の予定だそうです。

09/11/18(水)16:00 【日】

09/11/18(水)26:30 【日】

09/11/20(金)26:30 【日】 

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ネットラジオ「談話室オヤカタ」(11/4〜)

池田憲章さんのWebラジオ番組に『フロム・ヘル』訳者の柳下さんが出演、

まったりと『フロム・ヘル』トーク。

「1色のマンガなのに映画よりも血を感じさせる」「奥に豊潤なものを感じさせる」

「理性が揺さぶられた時代」……『フロム・ヘル』を見てこういう形容が

パッと出てくる(!)池田憲章さんの眼力はやはり違いますね。

番組の内容は11/19発売の『COMICリュウ』にも再録されるそうです。

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『SFマガジン』2009年12月号(10/25発売)

千街晶之さんによる『フロム・ヘル』の書評。必読です。

千街晶之さんは

翻訳ミステリー大賞シンジケートのサイトでも
『フロム・ヘル』の書評をしてくださっていました。↓
http://d.hatena.ne.jp/honyakumystery/20091009/1255033761

500ページを越えるこの大部のコミックが含む、数え切れないほどのふきだしの中から、
ただ一つを引用するだけで、このコミックの壮大な奥行きを気配で伝えてしまう絶技。
『フロム・ヘル』を未読の人はもちろん、
すでに複数回読んでいる人も、新たな愉しさを発見できそうな書評です。

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『週刊新潮』(10/22発売の、10月29日号)

大森望さんによる書評。
「ベストワンに推したい傑作コミック」という
強力な見出しに始まり、「最大最強の鬼才」
「異常な大作」「薀蓄と妄想の限りを尽くす」
「高定価」(これはちょっと違ったか)など、
天を突く勢いの言葉たちが踊っています。
ミステリ読みの人たちのみならず
コミック読みの人たちも届きますように。

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『映画秘宝』2009年12月号(10/21発売)

訳者である柳下毅一郎さんのインタビューに加え、
コミックの中身が数コマ披露されている豪華な紹介。
(「日本映画縛り首」も“収穫”がずらり並んで壮観です。)
読者プレゼントもあり。

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TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」
「サタデーナイトLabo」(10/17放送分)

23日のイベントも待ち遠しい、宇多丸さんによるご紹介。
聞き逃した人は番組の公式ページのポッドキャストを待ちましょう。

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文化放送「大竹まこと ゴールデンラジオ!」
「大竹紳士交遊録」(10/14放送分)

大森望さんが、『本の雑誌』(10/13発売号)に引き続き
大プッシュしてくださいました。
番組の公式ページからポッドキャストで聞けます。

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『本の雑誌』2009年11月号(10/13発売)

「新刊めったくたガイド」で大森望さんが
「翻訳ミステリの裏ベスト1」と!

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【以下はすでにご報告しましたが再録します。】
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『朝日新聞』2009年11月8日夕刊

小社初のコミック出版という切り口で
『フロム・ヘル』の刊行がとりあげられました。

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Webミステリーズ!(10/5更新)

作品紹介はわたくしめによるつたないもので、
小社提供の書影画像も暗くて面目ないのですが、
しかし……読者プレゼントが当たりやすそう。
http://www.webmysteries.jp/lounge/fromhellpresent0910.html

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『漫画アクション』2009年10月20日号(10/6発売)

これはまだ発売前ですが、柳下毅一郎さんのコラム、
アクションジャーナル「けっして特殊ではない見るべき映画教えます」
の掲載に合わせ、ささやかながら読者プレゼントに参加します。
日本のコミックは読む、しかし海外コミックは読んだことがないという人に
『フロム・ヘル』が届くことを願いつつ。

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『SFマガジン』2009年11月号(9/25発売)

冒頭のカラーページのところで刊行告知をしてくれています。
みっちりと内容の充実した、ちゃんと追悼しているJ・G・バラード追悼特集号。
(このコンテンツで940円とはクレイジーです。)

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『映画秘宝』2009年11月号(8/21発売)

このサイトを見てくださっているみなさんには
いまさらご報告するまでもないかもしれませんが、
これ以上ストレートな推し方はないというぐらいに
力強い推薦文を掲載してくれています。


刊行御礼! 書店を覗いてきました。

10日、『フロム・ヘル』が無事に発売されました。
制作やPRにご尽力くださったたくさんのみなさん、
応援してくれているたくさんのみなさんに心からお礼申し上げます。
今回の刊行は、通常の本の場合よりずっと数多くの方々のご協力を得て実現しました。

さてさて、荒俣宏さんと黒田硫黄さんの推薦文のはいった
帯がかかった姿は、店頭で初披露です。素敵でしょう?(あらゆる意味で。)
未見のかたは店頭でご覧になって、ニンマリしてください。
(“帯だけでも買いたい”という声まであるようですが、
帯の別売りはしておりませんのでご容赦ください。)
ジュンク堂池袋本店B1、A・ムーアのコーナー
これから書店のみなさまにはたいへんお世話になります。
今日はさっそく、お店に並んだ様子を覗いてきました。

まずは、いちはやく『フロム・ヘル』を大量に仕入れてくれた
ジュンク堂池袋本店さん。B1がコミックのフロアです。→
縦へも横へも積まれている『フロム・ヘル』、そして
『ウォッチメン』や『トップ10』も並ぶ、アラン・ムーアの棚が!
品薄のときにもここに行けばきっとあるのではないか、
というような頼もしい空間です。

ジュンク堂池袋本店さんではなんと、
1Fの新刊話題書の棚にも『フロム・ヘル』を置いてくださっています。

この棚にコミックが並んでいる情景が見られることはジュンク堂池袋本店1F、話題書コーナー
めったにないそうなので、右は稀少な証拠写真です。



有隣堂ヨドバシAKIBA店
 ←それからこちらは、有隣堂ヨドバシAKIBA店さん。
 大きな液晶ディスプレイで
 『フロム・ヘル』のトレーラームービーを流しているのが
 目をひきます。

 エディ・キャンベルさんに大至急秋葉原へ来てもらって、
 この画面に自分の絵が大写しになるところを見てもらいたい!



そのほかにも、『フロム・ヘル』に貴重なスペースとともに
読者と出会うチャンスを与えてくれている書店さんがたくさんあります。
ありがとうございます!


アンケート結果発表

刊行記念、特典付予約注文では多数のお申し込みをいただき、
ありうがとうございました。
大変お待たせいたしましたが、たくさんの方々がご協力くださった
アンケート結果を紹介いたします。

早速ですが、まずは皆さんがふだんどんな本を読まれているか。

1. コミック雑誌
2. SF
3. コミック
4. 小説
5. ミステリー
6. ノンフィクション
7. 海外小説
8. ファンタジー
9. 国内小説
10. 歴史物
11. ライトノベル
12. 専門書
13. ビジネス書
14. 新書

お一人で複数のご回答をいただいていますので一概にはいえませんが、
やはりコミックやSFが上位にきています。
ただ、本当に幅広い興味をもった方々が『フロム・ヘル』に注目してくだって
いるのだということは、次の質問へのご回答からもわかります。

「好きな作家は?」では、皆さん多くを挙げてくださいました。
「正の字」という最新技術を駆使して多い順に記してゆくと、


アラン・ムーア/柳下毅一郎
はもちろん、

フランク・ミラー

チャック・パラニューク

ジーン・ウルフ/舞城王太郎

伊坂幸太郎/乙一/伊藤計劃/小川一水/中原昌也/平田弘史/山田正紀
坂口安吾/筒井康隆/森見登見彦/手塚治虫/永井豪/山田風太郎
ニール・ゲイマン/コーマック・マッカーシー/マイクル・コナリー
ガルシア・マルケス/リチャード・パワーズ

J・G・バラード/スタニスワフ・レム/スティーブン・キング/クリストファー・プリースト
レイモンド・チャンドラー/レイ・ブラッドベリ/グレッグ・イーガン/ジェラルド・カーシュ
ジェイムス・カルロス・ブレイク/ジャック・ケッチャム/ジョー・R・ランズデール
スティーヴ・エリクソン/スティーブン・J・キャネル/タニス・リー/ロード・ダンセイニ
デイヴィッド・マーティン/ロバート・A・ハインライン/フィリップ・K・ディック
ミシェル・ウエルベック/R・A・ラファティ/レックス・スタウト/ローレンス・ブロック
エミリー・ブロンテ/ヴァージニア・ウルフ/ヘルマン・ヘッセ/マルグリット・デュラス
ウィリアム・バロウズ/チャールズ・ブコウスキー/トマス・ピンチョン
ジョン・アーヴィング/イアン・マキューアン/ウラジミール・ソローキン/ヤン・ポドツキ
カート・ヴォガネット/Mark Millar/Geoff Johns/Grant Morisson/Winsor Mccay
泉鏡花/三島由紀夫/野坂昭如/皆川博子/水木しげる/楳図かずお/藤子・F・不二雄
丸谷才一/小林秀雄/小林信彦/高山宏/種村季弘/山形浩生/井沢元彦/橋本治
京極夏彦/青木淳悟/金城一紀/富沢ひとし/平山夢明/町山智浩/木内一裕
夢枕獏/色川武大/杉浦日向子/金井美恵子/牧逸馬/山尾悠子/隆慶一郎
清水義範/菊地成孔/戸梶圭太/古川日出男/いましろたかし/吉田豪
矢作俊彦/東野圭吾/森博嗣/小林泰三/冲方丁/神林長平/酒見賢一/山田芳裕
中村博文/梶原一騎/ステイーヴン・D・レヴィット


と、敬称を略しざるをえないほど・・・。
「姓」だけを記せば、「小川」とは一水なのか知子なのか直也なのか、
「名」だけを記し、「チャック」ときいてウィルソンを思い浮かべる方も多かろう、
「信彦」ときけば、落合信彦に憧れてサングラスを買った青春時代を思い出す
方もあろう。というわけで、正確を期して姓名ともに書き出してみましたが、
本当、さまざまの分野にまたがっていますね。
なんかわかるわ!! から、こんな人もいたのね!! まで。

今回挙げられた作家を、コミック、SF、ファンタジー、ミステリー、サスペンス、
批評、等々と束ねてみることもできるかもしれませんが、個々の作家/作品が
そうであるように、『フロム・ヘル』自体、いろいろな要素が絡み合っていて
パッケージからしても内容からしてもそれを「これだ」と名づけてしまうのは、
なにかもったいないような気がします。
梶原一騎は梶原一騎でしょうし、
チャック・ウィルソンはチャック・ウィルソンなのでしょう。

なんだか身も蓋もない話になってしまいましたが、
水木しげるとアラン・ムーアの繋がりって、乙一との繋がりって、
と考えをめぐらせてゆのは、とてもワクワクすることです。
いずれにしてもこのアンケートで、『フロム・ヘル』が幅広い方々に
読んでいただける期待をもてましたし、いろいろな人に読んでほしい。

では、
・そんな皆さんが『フロム・ヘル』に興味をもったきっかけは?
・ふだん本やコミックについてどこから情報を得ているのか?
・最近読んでおもしろかった作品は?
などなど、数々のご回答に興味の尽きることはありませんが、
このつづきは、近日中に改めて紹介いたします。
お楽しみに!!!


特典付き予約注文の受け付けは終了しました。

予約注文&アンケートへのご回答でオリジナル図書カードをプレゼントする
特典付き予約は、定数に達しましたので受け付けを終了させていただきました。
ご予約いただき、アンケートにご協力くださったみなさま、たいへんありがとうございました!

幅広い嗜好をもったみなさまが、
今回『フロム・ヘル』日本語版に期待してくださっていることがわかりました。
アンケートの集計結果は、のちほどこの場でもご紹介させていただきます。

柳下毅一郎氏×宇多丸氏トークイベントについて、続報

 10月23日(金)、ジュンク堂新宿店にて催される
『フロム・ヘル』日本語版刊行記念のトークイベント
(9/7のお知らせ記事、「ムーア&『フロム・ヘル』を語る
トークイベント!
」参照)は、
すでに予約が満席に達したとのことです。
ほんとうに、あっという間に満席となりました。

ジュンク堂さんのほうでキャンセル待ちを
受け付けるかどうかはまだ未定とのことなので、
もしそのような可能性が出てきましたら、
ここでも告知させていただきます。

宇多丸さんが『ウォッチメン』について語った
myspaceの特集ページ
(〜9/17まで!)

予約受付スタート!!

お待たせしました。

本日12時、『フロム・ヘル』の特典付き予約受付を開始しました。

http://www.fromhell.jp/

予約に続いてアンケートにお答えいただいた先着200名様に
オリジナル図書カードをプレゼントいたします。

ご予約くださる方は、以下について予めご承知おきください。

特典のオリジナル図書カードは、
アンケートにご回答いただいた方への粗品として、
ご注文セット数にかかわらず、お一人様につき1枚をプレゼントいたします。
アンケートへの多重投稿防止のため、一つのメールアドレスごとに
一度しか投稿できませんのでご注意ください。

ご予約が完了した時点と、アンケートへ回答受け付けが完了した時点の2回、
みすず書房からのメールがご指定のアドレスに自動送信されますので、
お申し込み後に確認メールが届いていることをご確認ください。

もしアンケート受け付けの確認メールだけが届いていない場合、
あるいは、システムエラー等のやむをえない理由により、
ご予約の申し込みが完了したあとに、
アンケートの送信だけが完了できなかった場合は、
お客様にとって不利益のないように対処させていただきますので、
営業時間内にみすず書房営業部までお問い合わせください。

応募定数定数に達した時点で、特典付き予約受付は締め切らせていただきます。
締め切り後は、恐れ入りますがお近くの書店にてご予約をお願いいたします。


ムーア&『フロム・ヘル』を語るトークイベント!

 10月23日(金)にジュンク堂新宿店で、『フロム・ヘル』訳者の柳下毅一郎さんと
ライムスターの宇多丸さんが、ムーアの世界や『フロム・ヘル』について
対談するトークイベントが催されます。

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JUNKU トークセッション
2009年10月23日(金)18:30〜
A・ムーア×E・キャンベル『フロム・ヘル』日本語版(みすず書房)刊行記念

柳下毅一郎(翻訳家)× 宇多丸(ラッパー)
『コミックで世界を解く──魔術師アラン・ムーアの世界

鬼才ムーアの傑作グラフィック・ノベル『フロム・ヘル』の日本語版刊行を記念して、
訳者であり気鋭の評論家である柳下毅一郎氏と、
アイドル、映画など何を語らせても慧眼・妙句の人として
幅広い分野から注目されているトークの達人ライムスター宇多丸氏が、
アラン・ムーア、『ウォッチメン』、そして『フロム・ヘル』の魅力について語り尽くす。

ジュンク堂さんの告知ページはこちら
http://www.junkudo.co.jp/event2.html

☆ 会場…8階喫茶にて。入場料1,000円(1ドリンクつき)
☆ 定員…40名
☆ 受付…7Fカウンターにて。電話予約承ります。
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宇多丸さんの著書『マブ論 CLASSICS』、
アイドル世情に疎い私ですら、
妙に痒いところに手が届いたような快感を味わいながら
読ませていただきました。
たとえば少し古めの原稿ですが
松浦亜弥さんのアルバム『ダブル レインボウ』の評では、
「アイドル」の定義を
『魅力』が、『実力』に優っているパフォーマー
というふうにまとめたうえで、
 「元・天才子役」的な人が、実年齢よりだいぶ老けて見えてしまう、
というのはありがちな話だけど、例えば松田聖子が、
いくつになろうとアイドル・アイコンそのもののイメージを
保ち続けていることを考えれば、元来それに決して劣らない
資質を持っていたはずの松浦亜弥が、二十一歳にして、
まるで「演歌歌手がポップスに挑戦!」みたいな見え方、
聴こえ方になってしまうというのはやはり、
あまりにももったいない、可愛そうな話だと思います。
このジャケ写とかねぇ……髪型とか服装とかメイクとか、
誰かもっとちゃんとディレクションしてやれよ!
これには溜飲が下がりました(そんなことを私がここで吐露して
どうなるものでもないのですが)。
さらにアイドルを送り出すプロダクション側の問題について、
もっとも、これは彼女に限らず、ハロプロ全体に共通する傾向として、
二十歳を越えたあたりから途端に、
送り手側の何となく「扱いに困っている」感じが、
特に歌詞に如実に現れがち、というのはあるかもしれません。
いきなり疲れたOLが主人公、みたいな歌ばかりになってしまうというか……
恐らくこれは、若い女性の「成長」というものに対するビジョンが、
おおむね貧困なことから来るのではないかという気がしますが。
[「思えば遠くへ来たもんだ──松浦亜弥『ダブル レインボウ』」
(『BUBKA』2007年12月号掲載)より]
ほらね、痒いところに手が届いた……。
宇多丸さんの、ものごとのエッセンスを掴んで
言葉にして取り出すセンスが、いたるところで発揮されている本ですね。
内容も、本の作り方も、このうえなく懇切です。
→『ライムスター宇多丸の「マブ論 CLASSICS」 アイドルソング時評 2000〜2008』

→宇多丸さんがラジオ番組「ウィークエンド・シャッフル」で
『ウォッチメン』をフィーチャーした回(ポッドキャスト)


→ライムスターのオフィシャルブログ

一方、柳下さんは、ここで云々するまでもないことかもしれませんが、
アメリカン・コミックへの興味、SF/ニューウェーブの影響、
殺人事件の最も不可解な細部に惹かれるセンスなど、
アラン・ムーアといくつもの接点をもっている人だなあと思います。
ムーアも柳下さんも、その接点の裏にはそれぞれ、
他人には容易にわからないようなぐちゃぐちゃしたことどもを、
膨大に溜め込んでいるのではないかという気配があります。

10月23日(金)のイベントでは、ムーアや柳下さんの頭の中にある
複雑な味のスープから、達人シェフたる宇多丸さんが
旨み極上のエッセンスを取り出して、
私たちにも味見させてくれるのではと期待が高まります。
予定の合うみなさんはぜひ、このすばらしい顔合わせをお見逃しなく!


YouTubeにトレイラー・ムービーをupしました

こんにちは。システム管理者です。

このjugemのブログでは動画の投稿ができないので、
YouTubeにトレイラー・ムービーをupしました。

http://www.youtube.com/watch?v=VBAhu9R4qaM

編集担当者も申しているように、動画・音声ともに荘厳で、
『フロム・ヘル』の格調高い物語性を見事に表現していると思います。
(手前ミソですみません)

アラン・ムーアファンの方はもちろん、アメコミやミステリーのお好きな方にも
気に入っていただけると思います。

よろしくお願いします。